公爵令嬢シャルロッテ・シュヴァンは死亡しました

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公爵令嬢シャルロッテ・シュヴァンは死亡しました

 ああ、またか。というのが最初に抱いた印象だった。 「お母さま、やっぱりシャルロッテは普通じゃない! この子は魂を悪魔に売っているのよ!」  ふたつ違いの異母姉クローディアが顔を歪め、齢十三歳のシャルロッテを責め立てる。  わっと泣き出し、顔を両手で覆ってうずくまったのは、責められている側ではなく責める側だ。長い茶色の髪や(きら)びやかなドレスの裾が床につくが、彼女は気にしない。  いかに妹が非道で異端なのかを訴えるのが最優先だからだ。 「お父さまが病気で亡くなったのもこの子のせいよ! 私はシャルロッテと仲良くなりたいのに、いつも怪しげな本ばかり読んで……」  仲良く!? あなた私が話しかけても基本は無視するでしょ。  声を大にして言い返したい、もといツッコミを入れたくなるシャルロッテだが、ここはぐっと堪える。  この猿芝居はいつ終わるのかと呆れていたらそこに役者が加わった。 「シャルロッテ、いつもクローディアの優しさを踏みにじって、地下に(こも)ってばかりでなにを考えているの? 私たちは正直、あなたが理解できないのよ」  クローディアの隣に立つ義母のペネロペは眉を釣り上げ、シャルロッテを()めつけた。顔に塗りたくった白粉が眉間に寄せた皺の勢いでひび割れしそうだ。 「うちは王家からも目をかけられているシュヴァン公爵家なのよ。クローディアはラルフ王子の側室候補として名を連ねているのに、その妹ときたら……」  呆れ顔で呟くペネロペにシャルロッテは冷たい視線を送る。淡い紫色の瞳は珍しく、クローディアとペネロペには気味が悪いとよく言われた。  たしかに両親のどちらの瞳にもない色だが、蜂蜜色の長い髪は母譲りだった。
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