四ノ別レ 再会

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「こんな偉大な人に教えてもらえるなんて 僕はなんて幸運なんだろう エリクシル先生、これからよろしく願いします!!」 初めて出会ったあの時のように嬉しそうにはしゃぐリィンカ その様子から、前世の記憶はないようだ (当たり前だろう…… 名前も、顔も…同じだけど、違うんだから) そう言い聞かせていても、無意識のうちにかつてのリィンカを重ねてしまう 勉学において、努力を重ね続けているところも 成果を嬉々として報告しに来る時の、眩しい程の目の輝きも 少し立場や関係は違うが、まるで学生だった頃に戻ったようだ 「セイデル先生 今日の課題終わりましたー!」 「いつもより早いですね 特にやらなければいけない事もないので、今日はもう自由にしてかまいませんよ」 「本当? じゃぁさ、先生 一緒に街に遊びに行きましょうよ!」 「え? ま、街にですか? 急ですね、護衛として手が空いている人がいなければ……」 「先生がいれば大丈夫ですよ それに、僕は先生と二人で行きたいんですが……だめ、ですか?」 「――――」 子供が親におねだりしているように聞こえる言葉 しかし、その眼差しは期待と、師を慕う以外の特別な感情が籠っているようにも見える (応えてはいけない、この感情に 姿形や今までの日々が一緒だったとしても 私の、あの日の彼とは別人なんだ 応えては……) 「……、先生が嫌ならいいんですよ ごめんなさい、困らせちゃって」 「ッ……!? 待って!」 「?」 淋しそうな表情で去ろうとする、その表情がその背中が 最期のあの日、その場を去ろうとしたあの日のリィンカの背中に重なり、思わず呼び止めてしまった わけもわからず戸惑っているリィンカ それになんと言葉を返そうかと悩んでしまう その沈黙をどう解釈したのかはわからないが、 リィンカの瞳に、戸惑いの他に期待の色が見え始める 「〜〜ッゥ…、わ、わかりました 行ってもいいですよ」 「本当?! やったぁ!! 先生、ありがとうございます!」 押し負ける形でリィンカの誘いを受けてしまう その言葉にリィンカはこちらの手を取り、子供のように無邪気に喜ぶ しかし、すぐにハッとして手を離した その顔は少し紅潮している 「ごめんなさい、嬉しくってつい…… じゅ、準備してきます!」 バタバタと慌ただしく出ていき、一人部屋に取り残される 握られた手の温もりがまだ少し残っている (手を握られたのは、あの日以来か あの日、校舎裏で彼は……) そこまで思い出して、ハッと我に返り感傷に浸っていた自分を振りはらう 「彼はいない……、あの人は別人だ 早く準備しよう、急かされても困る」 これで何度目か、もう回数も覚えてないほどに言い聞かせてきた その都度胸に走る鈍い痛みを無視して
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