4人が本棚に入れています
本棚に追加
『出来損ない』 『能無し』
『魔術師なんて名乗るなよ』
『お前なんか生まれてこなかったらよかったのに』
ー絶対に見返してやる。家柄なんか、元々の実力なんか関係ないってー
『凄いわ!!』 『将来は名門家にも負けない魔術師になれるな』
『あの子こそ天才に違いないわ』
『あなたが生まれてきてくれて嬉しいわ』
ー出来損ないじゃなっかのか?能無しじゃなかったのか?ー
ー気味が悪いー ー邪魔ばかりしてきたくせにー
ーもう、誰も…、信用できるかー
ずっと見下してきたくせに、こっちの努力も知らないくせに
結果だけ見て、顔色を変える周りの人間が嫌いだ
利用しようとしているのが見え見えで気味が悪い
利用できないわかるとすぐに前と同じ扱いをしてくるのも
もう何も信用できない
それなのに……
「あ、やっと見つけた!」
校舎裏の静かな空間に似つかわしくない、明るい声で現実に引き戻される
声のした方を見ると、案の定リィンカがいた
「ハァ、どうしてついてくるんですか?
私に関わらない方がいいですよ
私はリィンカさんが考えているような人間ではないので」
「君もそんなこと言うの?
僕は僕の関わりたい人と関わることがいけないの?」
「私と関わったって何も得はないですよ
(期待させないでくれ)」
「友達と関わるのに損得勘定なんか必要?」
「友達って、私はそんなものになった覚えはないですよ
(違う、こんな言葉まやかしだ、信用するな)
だいたい、どうして私と関わろうとするんですか?」
「だって、君は家柄とかで判断して態度を変える奴らと違う
それに、僕らは似た者同士だから」
「私とリィンカさんが似てる?皮肉か何かですか?」
「違うよ」
「じゃぁ、どこなんですか?」
「努力して今の力を手に入れたこと」
「は…?」
「僕は元々落ちこぼれだったんだ
見返したくって、たくさん努力して、今みたいにたくさんの人に認められるようになったんだ
周りの人は結果しか見てないから、僕が元々天才だったみたいにしか見てないみたいだけど
そんな時、君が家族や親戚の皆がもてはやされてるのを聞いて、天才ってすごいなぁって、努力しないでも認められるんだって思ってたんだ
でも、さっき君の言葉を聞いてそれは違うって
君も僕と同じ、努力して認められるようになったんだって
それが、凄く嬉しかったんだ」
「(同じ…、全く同じ…、いや、全部じゃない)
そうだとしても、あなたは名門の家の出だ
私みたいな低級な家の奴と関わったら…」
「皆そう言って僕から離れていくか、利用するためだけに近づく
だから、本当の意味の友達なんてこれまでいたことがないんだ
家柄なんか関係ないよ
文句を言ってくる奴なんか蹴散らしていけばいい
それじゃ、だめ?」
純粋に、ひたすらに真摯に訴えかけてくる眼差し
今までに、こんなに真っ直ぐな目を見たことがあっただろうか
こんな真っ直ぐな言葉を掛けられたことがあっただろうか
同じ境遇で育ち、同じ気持ちを味わってきた者だからこそわかる
そこに偽りが存在しないことを
彼の言葉に疑いのない真実であることを
「信じても…いいんですか?」
「もちろん
今までの奴らみたいに絶対にセイデルさんを裏切ったりしないよ
だって、僕らはもう親友なんだから」
一歩近づいて、握りしめられた手を優しく包み込む
突然の出来事に驚いた表情を浮かべるセイデル
少しして、ずっと下がっていた口角がフッと緩んだ
「呼び捨てで構いませんよ
私も、リィンカと呼ばせてもらいますので」
「だったらさ、敬語じゃなくてもいいよ
親友なんだからさ」
「すぐには難しいかもしれませんが……
努力しま…努力するよ」
最初のコメントを投稿しよう!