ニノ別レ 告白

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学校を卒業しても、ずっと親友という関係は続いていた 変わらない、友としての関係 その先に進むための秘めた感情は弱まるどころか、より強くなっていた しかし、感情が強くなるほど、拒絶される恐怖も強くなり、伝えることがどんどん難しくなっていく そんな時だった 両親が縁談を持ち掛けてきた どこぞの名門の娘といくら会おうと、この感情が消えることはない しかし、もしかしたら彼は違うかもしれない 縁談を受けてしまい、縁談相手に取られてしまうかもしれないという不安が次第に頭の中を支配し始める 不安は日に日に強く、焦燥に近づいていく 次第に強まる焦燥は、ついに覚悟へと変化する (取られる前に、伝えなきゃ たとえ、この関係が終わってしまったとしても せめて、この感情を知ってほしい 僕のことを、記憶の隅に置いておいてほしい だから…) 街のはずれ、ひと気のない丘 街を悠然と見下ろすユーカリの樹の下に呼び出された 先に待っていたリィンカは、そわそわしていて心ここにあらずという様子だった 近づいても全く気付く様子がない 「リィンカ、おい、リィンカ!」 「へ?!あ、ごめん気づいてなった」 「まったく、急に呼び出してきたから、何事かと思って来たのに 一体何を気にしているんだ?」 「ごめんね、忙しいのにわざわざ呼び出しちゃって どうしても渡したい物があってさ これ、受け取ってほしいな」 手のひらサイズの薄いピンク色のリングケースを渡される 中には、ラピスラズリの桔梗があしらわれた指輪があった 鮮やかな瑠璃色に、非常に緻密な細工が目を、言葉を奪う 「きれいでしょ? オーダーメイドで作ってもらったんだ」 「オーダーメイドって…、なんでまたそんなことを」 「これを、こうしてみたかったから」 指輪を取り出し、セイデルの左手の薬指に通す 「何の真似なんだ? これじゃ、まるで…」 「まるで婚約指輪みたい…でしょ? 初めて会った時からずっと、ずっと好きだったよ ずっと伝えたかったんだ けど、君との時間が壊れるのが怖くて言えなかった でも、君のことだから、きっと素敵な女性を見つけてるかもしれない 君がその人と幸せになることは、僕にとっても嬉しいことだよ けど、その前にこの気持ちだけは伝えておこうと思って ごめんね…迷惑だったら、それ売っちゃっても構わないから それじゃ…」 「は?ちょ、ちょっと待ってくれ!!」 「どうし…え?!ちょ、セイデル?」 呼び止められ、振り向いた瞬間、抱きつかれた 突然の出来事に抱きしめ返せばいいのか、押し返せばいいのか手の行き場に困っていると 泣き出しそうな声でセイデルが小さくつぶやく 「迷惑なんて、そんなわけないだろう 自分のことばかり、言うだけ言って こっちの気持ちも考えずに勝手に離れようとするなよ」 「それって…つまり?」 「だから…!私も……」
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