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目を開いて、最初に見えたのは真っ白な天井
そこが病室であることに気づくまでそう長い時間はいらなかった
だがしかし一体なぜ、自分が病室にいるのか全く思い出せない
正確には、思い出そうとするとそれを阻止するかのように頭が鈍く痛む
ズキズキと痛む頭をおさえようと左手を動かした瞬間
薬指に光る桔梗が目に入った
「こ…、れは…、リィンカがくれた……
そうだ!!リィンカは?!リィンカはどこに?!」
何が起こったのかはまだ思い出せない
それでも、リィンカの身に危険が迫っていたことだけは思い出せた
ベッドを飛び出し、病室の外へ駆けだそうとドアを開けようとした
しかし、ドアノブに触れる前にドアが開く
その先には、医師と両親が驚いた顔で立っていた
「セイデル!!?目を覚ましたのね?!!
よかった…本当によかった…!!
あなたが、狂信者に襲われたって聞いて、てっきり私はもう…」
「狂信者…襲われた…?
いや、それよりも、リィンカは?
リィンカは今どこにいるんですか?」
「それは……」
医者も、両親も言葉を濁し、その先を言おうとしない
ばつの悪そうな顔に、不安な気持ちを掻き立てられ、最悪の予想が頭をよぎった
(まだだ、まだ確定したわけじゃない
そんなわけない、だって、まだ伝えきれてない)
「それはって、どういうことですか?
答えてください、母さん!!
父さんでもいい、リィンカは?リィンカは今どこに?」
「お前のせいじゃない、自分を責めなくていい
すべて、すべて狂信者の奴らが悪いんだ」
「何を言って…?はっきり答えてください、父さん!!」
「彼は、もういないの…」
母の消え入りそうな声が鼓膜を僅かに、それでも確かに揺らした
その響きを、聞き間違いだと思うより前に
記憶を覆っていた痛みが晴れる
「思い、出した
そうだ、私は…あの時…」
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