6.新しい一歩を踏み出しましょう!

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 放課後。  私は東雲君と二人きりで下校をする。  まさか肩を並べて歩けるとは思わなくて、もう感無量。  ずっとうつむいて黙っていた東雲君が、勢いよく顔を上げる。 「天国、あのさ」 「なに?」 「俺たち、その、付き合わない?」 「えっ? どこに?」 「はあ? なんだよその古典的なボケは!」  東雲君は耳まで真っ赤にして怒っている。  えっ、付き合うって、それって。 「それは、その、恋人になるという、その伝説の……」 「なんだよ伝説って。そうだよ。その伝説のそれだよ」 「私なんかでいいの?」 「天国だからいいんだよ!」  東雲君の言葉に、私の心がふわりと浮いたような気がした。  ああ、もう幸せすぎなのでは?  やばい。  これやばい。  こんなに充実した中学生活……。  そこまで考えた時、手を握られた。  東雲君の手は大きくて温かい。  って!  手をつないでるーーーーー!  ダメだ、これもう幸せ過ぎておかしくなりそうだ。  ああ、こんな時間が永遠に続けばいいのになあ。  そう思った瞬間。  体がずしっと重くなる。 【ちょっとー! なにここ?!】  脳内で響く見知らぬ女性の声に、私は大きな大きなため息をついた。  タイミング悪っ!  憑かれるのって、本当に疲れるんだよ……。 
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