1.お弁当を食べましょう!

11/12
前へ
/50ページ
次へ
【お前さ、飯食わなくていいのかよ】 「お腹減ってないから」  そう言った途端に、ぐーきゅるるるるという音が静かなリビングに響く。 【今のは……腹だろ】 「ち、違う! 今のは、咳よ咳」  私はそう言い終えるとげほごほとわざとらしい咳をする。 【いや、腹の虫だろ。お前に憑いてるから空腹の感覚もわかってるんだよ】 「……それもそうだね」 【飯を食え。お前が動けないと俺も動けないわけだから】 「ううーん……」 【なんなんだ。食べるところも見られたくないのか。面倒だな】 「ってゆーか、食べるとその後はトイレに行きたくなるわけで、それがね、また厄介で」  私はそう言って、さきほどのトイレのこと思い出す。  目を閉じ、耳栓をして、トイレに入ることの難しさよ……。 【俺は気にしないけど。生理現象だろ】 「私が気にするの! 生理現象だろ、じゃないわよ! ばあああか!」 【なんでそこですげーキレてんだよ。キレるポイントわからねえ。これだから女子は……】 「本当にデリカシーがないんだね。これだから男子って嫌い!」  私はそう言うと、そっぽを向く。  どこを向いたって、離れられないのはわかっているけど。
/50ページ

最初のコメントを投稿しよう!

192人が本棚に入れています
本棚に追加