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【お前さ、飯食わなくていいのかよ】
「お腹減ってないから」
そう言った途端に、ぐーきゅるるるるという音が静かなリビングに響く。
【今のは……腹だろ】
「ち、違う! 今のは、咳よ咳」
私はそう言い終えるとげほごほとわざとらしい咳をする。
【いや、腹の虫だろ。お前に憑いてるから空腹の感覚もわかってるんだよ】
「……それもそうだね」
【飯を食え。お前が動けないと俺も動けないわけだから】
「ううーん……」
【なんなんだ。食べるところも見られたくないのか。面倒だな】
「ってゆーか、食べるとその後はトイレに行きたくなるわけで、それがね、また厄介で」
私はそう言って、さきほどのトイレのこと思い出す。
目を閉じ、耳栓をして、トイレに入ることの難しさよ……。
【俺は気にしないけど。生理現象だろ】
「私が気にするの! 生理現象だろ、じゃないわよ! ばあああか!」
【なんでそこですげーキレてんだよ。キレるポイントわからねえ。これだから女子は……】
「本当にデリカシーがないんだね。これだから男子って嫌い!」
私はそう言うと、そっぽを向く。
どこを向いたって、離れられないのはわかっているけど。
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