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私は今朝、田中先輩の彼女である三原先輩の指示通りにお弁当を作った。
卵焼き、タコさんウィンナー、ミニハンバーグ、ポテトサラダにおにぎりという気合いの入ったラインナップ。
三原先輩の最後の願いが【彼氏だった田中君にお弁当を食べさせたい】というものだったから、料理上手なんだなあと勝手に思っていたんだ。
だけど、その解釈は大間違いだった。
とにかく、料理が独創的。
悪く言えば、材料を無駄にしているとしか思えない料理の指示だったのだ。
まずは、卵焼きにたっぷりの砂糖。
あれは大さじ5杯は入ったね。それが一人分の卵焼きだよ?
しかも、その甘い卵液にはお酢とケチャップとマヨネーズも入った。
極めつけに練乳もぶちゅーーーと大さじ3。
練乳側も苺やパンケーキにかけられることはあっても、まさか卵焼きに大量に投入されるとは思うまい。
さすがに最初は、私の聞き間違いかと思ったけど、どうやら聞き間違いではなかったのだ。
三原先輩は【えっ? これぐらい普通ですよね】とかあっけらかんと答えていた。
普通じゃねえ。
さらにミニハンバーグには、何の隠し味なのかイチゴジャムがたっぷり。
ポテトサラダにいたっては、マヨネーズ少な目、あんこたっぷり。
さすがに私も、「これはちょっと」と口を挟むと、三原先輩はうれしそうに言った。
【田中君、甘党なの】
いや、甘党だからって普通の食事に砂糖とか入れてほしいわけじゃない。
甘党なめんな!
……なんて反論しても厄介なので、私はその激甘で激マズ弁当を指示通りに作り終え、今に至る。
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