1.お弁当を食べましょう!

3/12
191人が本棚に入れています
本棚に追加
/50ページ
 私は今朝、田中先輩の彼女である三原先輩の指示通りにお弁当を作った。  卵焼き、タコさんウィンナー、ミニハンバーグ、ポテトサラダにおにぎりという気合いの入ったラインナップ。  三原先輩の最後の願いが【彼氏だった田中君にお弁当を食べさせたい】というものだったから、料理上手なんだなあと勝手に思っていたんだ。  だけど、その解釈は大間違いだった。  とにかく、料理が独創的。  悪く言えば、材料を無駄にしているとしか思えない料理の指示だったのだ。  まずは、卵焼きにたっぷりの砂糖。  あれは大さじ5杯は入ったね。それが一人分の卵焼きだよ?  しかも、その甘い卵液にはお酢とケチャップとマヨネーズも入った。  極めつけに練乳もぶちゅーーーと大さじ3。  練乳側も苺やパンケーキにかけられることはあっても、まさか卵焼きに大量に投入されるとは思うまい。  さすがに最初は、私の聞き間違いかと思ったけど、どうやら聞き間違いではなかったのだ。  三原先輩は【えっ? これぐらい普通ですよね】とかあっけらかんと答えていた。  普通じゃねえ。  さらにミニハンバーグには、何の隠し味なのかイチゴジャムがたっぷり。  ポテトサラダにいたっては、マヨネーズ少な目、あんこたっぷり。  さすがに私も、「これはちょっと」と口を挟むと、三原先輩はうれしそうに言った。 【田中君、甘党なの】  いや、甘党だからって普通の食事に砂糖とか入れてほしいわけじゃない。  甘党なめんな!  ……なんて反論しても厄介なので、私はその激甘で激マズ弁当を指示通りに作り終え、今に至る。
/50ページ

最初のコメントを投稿しよう!