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五時限目。
数学の授業が自習なのを言いことに、私はぼんやりと窓の外に視線を向ける。
私の視線の先は、グラウンドで体育の授業のサッカーをしている二組の男子……ではなく。
録画しておいたサスペンスや推理ドラマのことを考えていた。
幽霊にとり憑かれている間は、何だかんだと騒がしいので、ゆっくりとドラマを観ることができない。
とり憑かれていない今なら、ドラマも映画もゆっくりと鑑賞し放題。
日本のサスペンスも好きだけど、海外の特に刑事ものなんかも好きだ。
難事件がテンポ良く解決されていくだけではなく、犯人が近くにいるのでは? という恐怖もハラハラして面白い。
最初に視聴者にだけ犯人がわかるタイプのドラマも好きでよく観ている。
でも、心霊系のホラーは、幽霊を知りつくしている(多分)ので、まったく怖くない。
やっぱり一番、怖いのは人間なんだよね。
そんなことを考えて、一人でうんうんと頷いた時。
「え?! 男の子の霊?!」
その声に耳がぴくりと反応する。
斜め向かいの席の男子が、嫌な言葉を発した。
すると、前の席の女子が神妙な面持ちで頷いてから、言う。
「そう。昨日さー、放課後に見たんだってー。うちらと同じ歳……もっと下の小学生くらいの男の子のオバケを……」
「えー。それってこの高校の男子とかじゃなくて?」
「それがさ、なんかこう、違うんだってば。微妙に透き通ってたし。で、よく見ようとしたら消えたの」
「俺そう言う話はダメなんだって! トイレ行けなくなる! つーか、幽霊なんかいねーの! 見間違い!」
男子がこっちが引くレベルで怖がっていたので、話はそこで終了してしまった。
聞く限り、それは間違いなく幽霊だろう。
幽霊に何度も何度もとり憑かれてきた私のお墨付き。
「本当なのになー」
そう言う前の席の女子の言葉に、私は小声で呟く。
「嘘ならいいのになあ」
その幽霊が、この女子の口から出まかせなどではなく、尚且つ『なんとなく出てきちゃった! てへ☆』という類ではないなら、そいつは、何らかの心残りがあって、そこにいるからだ。
そして、心残りがあると、私に憑くんだよ!
だけど今のところ何も異変はないので、憑かれないかも。
幽霊を見たって言うこと自体、ただの見間違いの可能性だってある。
うんうん、気のせい気のせい。
私は自分にそう言い聞かせて、また妄想の旅へと戻った。
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