5人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
出前外注と店舗のリフォーム
その間に携帯を少し耳から離していた俺は、次に聞こえてきた山村の声に、さっきと同じ様に耳がつんざかれることはなかった。
『開いたよー!ネットで『ケーキ屋モサコ』って保から連絡が来てるー』
「見れば解ると思うが実は今度、配送サービスをしようと思ってるんだ」
『へー!良いじゃん!僕もお店が定休日の時に注文しようかなぁ』
『出前外注なら、もっと良いんじゃないですか?』
「その手があったか!」
『害虫?』
『言ってみれば出前のアウトソース化です。フードデリバリーサービスを提供する千夜くんがケーキ配達を行うドライバーと契約してお店からお客様までケーキを届ける仕組みです』
「店員はケーキ作りに集中出来るな」
『害虫なのにー?』
『…コストも削減出来ますし、如何でしょうか?』
「サンキュー、鈴木。雅とレイアウトを変えてネットで配信してみるぜ」
流石、鈴木。
『よく解んないけど、凄いね、保!』
『後…』
「…何だよ?」
『リフォーム中はお店を閉めて出前外注に専念した方が良いかもしれませんね。後、ネットを見れない方達の為にも画像を印刷してビラを近所にポスティングするのも1つの手だと思います』
鈴木の提案を受けた俺は、レイアウトを雅と相談しながらネットに配信し、ポスティングした。
そして、無事にドライバーと契約した俺は、店舗の拡大を始める。
たまにデケー音がするが、従業員募集の面接は、店の片隅で行われる。
そんな矢先、従業員も増えてきた、ある日。
リフォームの業者達が工事を休んでる時に俺は従業員募集に応募してきた若い男(履歴書には小野光と書かれている)と面接していた。
「お疲れ様です。お茶淹れてきたので、良かったらどうぞお飲み下さい」
雅が、業者達に茶を振る舞いに店まで降りて来た。
と、その時、小野が雅に視線をやったのが解る。
俺は言う。
「当店を志望した理由は何ですか?」
「…」
ところが俺の質問に対して、うわの空で雅を目で追っている小野。
コイツ、雅に気があるのか?
だとしたら、コイツを雇ったら雅に、それこそ山村じゃねーが、害虫が付く。
直感で、そう思った俺は小野に言ってやった。
「残念ですが、不採用ということでお願いします」
「はい…って、ええっ?!」
驚く小野には、それ以上は何も言わずに、俺は次の奴の面接に入る。
小野は雅を名残り惜しそうに見てから、トボトボと去って行った。
下心のある男は、速攻落とす。
そして、数ヶ月後にはリフォームも無事に終了した。
最初のコメントを投稿しよう!