雅、救出

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雅、救出

そして、足で刃物を遠くに蹴り飛ばしてやった。 「あ…」 前屈みになっている小野の頭を俺はげしげし蹴りつける。 「痛い!止めて!」 やれやれ。 これじゃあどっちが加害者か解んねーな。 俺はしゃがむと、小野の胸ぐら掴んで凄んだ。 「2度と雅に近付くんじゃねー」 「ひいっ!」 小野の顔が恐怖のせいか引き攣る。 と、同時に目撃者が呼んだ?パトカーの音が聞こえてきた。 小野は駆け付けた警察に逮捕された。 それから店の中に居た俺等全員、事情聴取を受ける。 俺は小野が前々から雅に対してしてきた事、それから店の中で何が有ったかを話した。 いちいち事細かく聞かれ俺はその都度、刑事の質問に思い出せる範囲で応える。 あー面倒くせー。 しかし、ここで如何に小野が悪いかを話しておかないと、奴が釈放されたら、溜まったもんじゃねー。 雅も嫌なことを思い出したのか、俺とは別の刑事に話す表情は痛々しかった。 「刑事さん、娘は精神的ショックが大きい。少しの間、休ませてやっちゃくれねーか」 俺は自分の事情聴取が終わってから、雅に質問してる刑事にそう言ったが、雅は首を横に振る。 「お父さん…ありがとう。でも私、大丈夫だから」 「強い娘さんですね」 刑事はそう雅を褒めた後、質問を続けた。 刑事達が帰って行った頃には、もう閉店時間になっている。 小野め…営業妨害しやがって。 俺は舌打ちをすると、仕方なく、従業員達を帰し、閉店準備をし始めた。 いつもはショーウィンドウに置いてある分は、殆ど売れるのに今日は随分売れ残っている。 売り上げ金もいつもの半分をいくかいかないかだ。 それでも、俺等全員、怪我もせずに済んだのが救いだった。 俺は掃除をしている雅に声を掛ける。 「雅、今日は掃除は俺がしとく。今日はもう部屋に戻って休め」 俺は雅のことを心配して、そう言ったが…。 「ううん、やらせて。部屋で1人で居ると色々なこと思い出しそうで…」 雅は節目がちにそう応えた。 色々な事とは小野との事だろう。 それもそうか…。 俺は小野の雅へのストーカー行為の証拠に雅から預かっていた手紙も刑事に渡してある。 後は小野がどんな裁きを受けるのか、さっぱり見当はつかなかったが、警察と裁判官に任せるしかない。 「それより、お父さん」 ゴミをちりとりにほうきで入れながら、雅が俺に向かって言った。 「?何だよ?」 「残ったケーキ、お母さんもいれて3人で食べない?」 「そうだな…」 ウチは香澄が何でもよく食うから良いかもしれねー。
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