人狼的配慮

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人狼的配慮

闇の中、スマートフォンのバイブレーションが響く。 ぱっ、とテーブルの上で画面が灯り、天井が青白い光で照らされた。 私はカズくんを抱えたまま、フローリングをにじった。 表示されていたのは、夫からのSNS着信だ。 ――電車が止まっている。停電のせいらしい。 メッセージを読んで、ふっ、と気がゆるむ。 スマフォを手に取った瞬間、ぱぱっと明かりが点いた。 キッチンから、リビングから、電気製品のたち上がる、か細い唸りが響いた。 停電のあいだ、どれほど静かだったことか。 今になって分かる。 私たちはいつも光と音に、囲まれて暮らしていたのだ。 カズくんが膝から下りたので、テレビの電源を入れ直した。 ニュースでそのうち、停電のことをやるに違いない。 待つ間に画面を開いて、夫に返信を打つ。 ――停電終わった。パパどのはだいじょうぶいぶい? スタンプを選んでいると、息子が声を上げた。 「ママ、『じんろうしえん』って、なに?」 はい? なんですって。 とりあえず、Vサインを出したこぶたのスタンプを送信、と。 息子くん、もう一度プリーズ。 カズくんが口を開く前に、番組MCの声が聞こえた。 「では、人狼支援団体代表の〇〇さんに、ご意見を……」 軽いめまいを覚えた。 人々は、いつの間に人狼を支援するようになったのか。
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