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「二人は職場で出会いとかあった?」
千鶴は話しを逸らそうとする。
「私は仕事覚えるのでいっぱいいっぱいかなぁ。恋に興味がないわけじゃないんだけどねぇ……」
「美琴ちゃんは海外ドラマの見過ぎで、恋のハードルが高くなっちゃってるのよ〜。なかなかあんな自然にキスしてベッドインはないと思う」
「でも欲望のまま激しい恋に落ちるなんて憧れるけどな〜」
「体から始まる恋。それも素敵かも」
「……ちょっと、二人だけで盛り上がらないてくれる?」
美琴は二人の会話を遮る。
「そういう紗世はどうなの? 大手の会社だし、出会いとかいっぱいありそうだよね」
「でも私は研究室勤務だから、さほど関わってないかなぁ。みんな顕微鏡覗いてるし。でも時々波斗先輩とはお昼食べたりするよ」
「そっか。同じ会社だもんね」
「相変わらず女性人気は高いよ〜。あんな天然さんなのにね。そこがかわいいのかなぁ。まぁ私は後輩という立場を利用して、よく社食を奢ってもらってるけど」
波斗先輩は三人の大学時代のサークルの二学年上の先輩で、彼を目当てにサークルに入る子もいた程のイケメンな上、天然ボケな面がかわいいとギャップにやられてしまう女子が多かった。
「紗世ちゃんは先輩は恋愛対象にならないの?」
千鶴が聞くと、紗世は口元に思わせぶりな笑みを浮かべる。
「さぁ……どうかなぁ」
「ちょ、ちょっと気になるじゃな〜い! アリなの⁈ アリってことなの⁈ 美琴ちゃん、ここに小悪魔がいるよ〜!」
美琴も少し驚いていた。紗世は今まで恋愛の話には聞き役に徹していたため、こんな表情を見たのは初めてだったのだ。もしかしたら本当に先輩のことはアリなのだろうか。
私は何も変わってない気がするのに、みんな少しずつ変わっている……それが嬉しくも寂しくもあった。
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