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「なぁ、覚えてるか?出立時の家斉様の御言葉を」
左乃助はエベレストを見上げながら、後方に居る2人にそう言った。
孫次郎は
「勿論一言一句たがわず覚えている。いよいよ世界一の山に登る時が来たな?此処まで長い道程であった」
と感慨無量に言った。
宗右衛門はにこにこしている。
左乃助は振り向き、孫次郎に言う。
「いやいや、これからが勝負ぞ。我らはこれから世界一高い山に登るのだ」
宗右衛門は笑顔で
「殿の命を成す為、参りましょう!」
と右拳を上げた。
孫次郎は宗右衛門に向かって言った。
「宗右衛門殿、楊枝はちゃんと有りますかな?武士は食わねど高楊枝、常に余裕であらねばなりませぬ」
「無論必需品にござります!」
左乃助は深い溜め息を吐いて下を向いた。
この3人は、11代将軍徳川家斉の家臣であり、皆剣の達人である。
家斉の命により、本日世界一の山エベレストを登るのだ。
1813年7月であった。
家斉の趣味は、世間には隠していたが登山であった。
有能なこの3人と共に、山登りをするのを楽しみとしていた。
家斉は海外にエベレストという世界一の山があると聞き、目を輝かせた。
そこでこの3人に言ったのだ。
「儂は国の為エベレストにはゆけぬ。そなた達!儂の代わりにエベレストに登り、山頂の景色を見てくるのじゃ!」
3人は外国船に乗り、エベレストを目指した。
長い旅路を経て、此処まで来たのだ。
3人はこれからエベレストに登るのだが、姿は着物に草履、刀もしっかり携えていた。
「行くぞ!」
3人は歩を進めた。
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