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――あ、退職の理由ですか?
まあ聞かれますよね。その、一言でいえば「人間関係」ってやつです。あの……、というかちょっとホント聞いてもらっていいですか? 正直、あの会社にはもう二度と行きたくありません。
配属されてすぐは、別になんの問題もありませんでした。いや、むしろいい感じの職場だなって思ったんです。名の知れてる大企業とかじゃありませんけど、うちからは近かったし、小ギレイだったし。
一緒の部署の女の人……アキコさんっていう名前で、直属の上司になる人がいて、その人はいい人でした。もの静かで、ちょっと神経質そうで。楽しくおしゃべりができるってタイプじゃないですけど、必要以上にからんでこないし、職場の人間関係なんてそのくらいが一番いいってものですよね。
仕事内容もそんなに難しくなかったです。まぁ日によって色々ですけど、毎日忙しいわけでもありません。残業もほとんどありませんでしたね。だから職場としてはこれは「当たり」だなって……最初は思ったんですよ。
なんかおかしいなって思いはじめたのは、入ってから2週間くらいたってからだったと思います。うちの部署の女性は私と、アキコさんの2人だけしかいないんですけど、すぐ隣には別の部署があって、そっちに女の人がひとり居たんです。名前はスミコさんといいます。
ひっつめ髪にほとんどいつもノーメイクで……。私服もなんていうかちょっとダサくて、印象としては「田舎くさいおばさん」って感じでした。確か40代のはずですけど、顔立ちもどことなく幼くて、田舎学生がそのまま年を取っちゃった、みたいな。まあ良くいるオツボネってやつなのかなって。そんな印象でしたし、あんまりからむことはないだろうなって思ったのを覚えてます。
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