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その後、しばらくは目立った問題は起きませんでした。もちろん私が休んでいたときとか、見ていないところで何かが起こっていたとしてもわかりませんけれど、私の知るかぎりでは比較的平穏な日が続いていたと思います。
相変わらずアキコさんは神経質でした。でもそういう性格だとわかってしまえばつきあいづらい人ではありません。
スミコさんには正直どう対処していいものか、いい結論が出たわけではありませんでした。スミコさんのトイレの時間まで気にかけながら行動するなんていうことは、私にはできそうにありません。
悩んだ挙句、折衷案でもないんですけれど、給湯室などで見かけたときは、なるべくこちらから声をかけ、「敵じゃありませんよ」というアピールをすることにしました。内心はビクビクですが、いきなりなんの心当たりもない場面でグサッと刺されるよりはずっとましです。気にさわったことがあれば、そういうタイミングで言ってくれるかもしれません。想定できるリスクは前もって下げておくに限りますよね。これも処世術のひとつです。
効果のほどはよくわかりませんが、少なくとも面とむかって叱られるようなことはありませんでした。直属の上司だったら、この段階で耐えられなかったと思いますけれど、幸いにも直接的には関係のない人でしたから。
そうやってしばらく平穏に過ごした日々は、今から思えば、嵐の前の静けさというものだったのかもしれません。
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