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出発したときからずっと隊列を崩さず一列に並んでいた俺たちを、森本さんは毎日1名ずつ連れ出した。
控え室の扉が開くたび、希望の光が差し込んだ。
暗がりから光の先へと出て行った同僚は戻らず、次の日はまた別の者が役目を負うことになった。
俺は隊列の中で最後尾に近い配置だったので、前に並ぶ150近い同僚たちの出立を見届けながら士気を高めるばかりだった。
誤算だったのは、毎日1名のペースで発されていた出動要請が、途中から2、3日に一度に減ったことだ。
森本さんが外出しない日、俺たちは必要とされなかった。
最初のうちは毎朝スーツで身を固め出て行っていた森本さんだったが、ある時期からワイシャツ1枚のラフな姿で、机の上のパソコンの電源をつけるようになったのだ。
「もしもし森本です。本日も開始します」
携帯電話に向かってそう告げた森本さんは、隣の台所で昼食をとる以外は窓の外が暗くなるまでずっと机に向かっていた。
深刻な顔でパソコンを操作したり、画面越しの相手と時折なにやら話し合ったりしていた。
その状況下では肉体労働者の俺たちが力になれるはずもなく、扉が半開きになった控え室の薄暗がりから、パソコンのキーボードが叩かれる小気味よい音をただ聞いているよりほかなかった。
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