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厄介な命を受けたもの。颯真は、上官の我が儘な恋人へ眉を潜めつつも、抗う事無く足を進めてやるのだった。
二度、地を震わせた音が響いた山では見張りを命じられている武人達も息を飲んでいた。先程から感じる二つの力は、信じられない程に大きなものである事は分かる。本当に、此処は安全なのだろうかと不安になる程に。
其の戦いの現状とは――。
「――っ、元気な坊やだな……」
苛立ちと共に吐き出した声は棕櫚のものであった。
「貴方も。お若いことだ……」
双方、荒い呼吸と共に出た皮肉。向かい合う両者は、顔、体、所々に血が滲む程に傷付いていた。そして肉体、精神の疲労も。消耗した力は、互いに何れ程であろうか。戦いに力の消耗が激しいのは、やはり要。しかし、肉体的な疲労を補う為に、棕櫚も力を振り分ける必要が出てくるのだ。其の程度によれば、両者にそう差は無いだろう。
「力をこんなに使った事は無い……結構辛いものだな」
まだ整い切れない呼吸の中、棕櫚が言葉を。
「みたいですね……」
要も同意した。そう。こんなにも力を使ったのは初めて。己の限界も知らない、使い切ると言う事はあるのか。又、其れをして生きていられるのかも分からない。
生まれた時より持っている力。何の為か分からずに、煩わしささえ感じたものだが。
「力を失くす分には構わないが」
「私は両方いらない」
棕櫚が冷たい瞳で、要の言葉を遮った。
「君。生きていたいのか……そんな思いで戦に出ているとはね」
鼻で笑う棕櫚を要は見詰めたまま。
「はい。生きて戻るつもりで戦ってます」
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