其の力は。

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 強い声であった。僅かに険しさをも見せる要へ、棕櫚も嘲笑が消えた。 「ほう……私と同じだと思っていたから。まさか、君が生きていたいとはね」  笑みは消えたが、蔑む様な瞳だ。しかし、要も表情を変える事は無い。 「少し前なら、貴方と同じです。だが、色々と興味が湧きました」 「興味……」  要は、己の中に残る力全てへ意思を込める。 「他人にも、己にも……此の力を持って生まれた事にも」 「分かりきった事……全てを壊す力だ。己も含めてな」  苛立ちと共に、棕櫚も全てを投げ得る覚悟で力へ意思を。要は、棕櫚を強く睨んだ。 「違う。全てを壊さんとする貴方へ、抗える力だ」  真っ向より否定する、叫ぶ様な要の声。其の瞬間。双方、最早無駄に動く体力無くも、地へ付けた足は力強く踏ん張る。其の場から、残る力へ意思を乗せ互いを滅す意思と覚悟を放ったのだ。二人の間でぶつかる力。強い光。山が耐えるのは、恐らく此れが最後。  其の轟き、異変は麓にて待機していた武人を遂に恐怖へ落とした。今迄に無い其の揺れと音に、避難する者迄出だしたのだ。そんな混乱の中、山の麓へ着いた颯真と葵も表情に不安を見せる。二人は、どうなったのだと。続く地鳴りに、葵は颯真の腕を強く握り締める。 「――颯真、お願いだ。要の元へ行けないか」 「お前……」  意見仕掛けた颯真だが、葵が必死な眼差しを向ける。 「頼む。今のは、要も老師も力を使い切る程のものじゃないのか」  其の言葉へ、颯真は口を噤む。 「兄者は望まない。お前が行っても――」 「最期を迎えるのがどちらでも、見届けたい。俺には、其れしか出来ない」
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