其の力は。

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 此度の頂上戦は、水の國が勝利をおさめた。戦で、殆どの力を使ってしまった要。其の身体や、力はどう変化するのかと周囲も息を飲んで見守っていたのだが、徐々に回復を見せ始めたのだ。僅かでも力が残れば、肉体の生命力と呼応し甦る様だと。一方で、今回己の意思で其の力を他者へ壌渡が可能という事も明らかとなったが、此の事は要、葵、颯真、其々の中で止める事とした。力の壌渡により一方の生命力も奪うという事と、力を得た者が危険分子となる可能性も否めないからだ。  此の戦を勝利と言う形で祖國へ歓喜をもたらした要は、年若いながら老師の地位を認められる。腐敗し、無能であった嘗ての最高機関に腰を下ろして居た者等は、其の力量に見合った地位へと振り分けられたのだった。  そして、他の國への影響は。各國の最高機関も集い、告げられたのは頂上戦の廃止であった。其々戸惑いと恐怖に憤りを見せるも、水の國より其の内容を説明された。頂上戦があれば、棕櫚の様な者が再び混乱を招くと。此れを機に、頂上となる國を作らないとしたのだ。つまり、最高機関は其々の國へ置いたままに五つの國全てで同盟を組み、一つとするのだと。戸惑う指導者達であったが、棕櫚の招いた混乱は悲惨なものであった。確かに、己等が支配出来る時が訪れても、次があるとも限らない。他國へ遺恨を残せば、次には従属国となる危機も。一國の賛成を機に、他も順に其れを受け入れて。  各國、持ち帰った課題。先ずは、片寄った経済の動きを戻す事、更に軍や法も改めねばなるまい。訪れた転機。五つの國は、新たな在り方へと動き出したのだった。
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