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五行の力を持つ人が暮らす世界。其々の力を持つ者達が、五つの國を作り上げた。其れは、木の國、火の國、土の國、金の國、水の國と呼ばれていた。
絶対の権利を握る為に行われる先の戦いで、勝利をおさめた木の國。実は此の國は、ある年より三度の防衛戦を勝ち取っているのだ。当然、富の差は他とかなり開きが。各國共に、何としても次の決定戦には勝利をと些か殺気だってもいた。
そんな木の國は、本日も民の表情が明るく輝く様だ。富と人の心は大きな繋がりがあると実感する。出身國の違いにより賃金に差は出るにも関わらず、他國者が木の國へ出稼ぎに来る姿もあり賑やかなもの。そんな町中、行き交う人の波を避ける様に佇む男二人が眺めるのは、買い物中の一人の青年。
「――彼奴だ」
青年を確認した一人の男が、静かにそう声にする。丸く朗らかな茶色の瞳からは、状況の緊張感が伺えた。其れを隣で、先の男より頭ひとつは高い男が、然して興味が無いと言う様に軽く視界へ入れた。銀色の瞳が、冷たい雰囲気に拍車を掛ける様な美丈夫。
「息子か」
溜め息と共に会話を促す様子からも、状況へ二人の温度差がある様だ。もう一人は、変わらぬ雰囲気で相方へ顔を向ける。
「いや。詳しい事はまだ……只、息子では無い事は確かだ。老師の愛人だという話が濃厚と」
神妙に伝えた相方。老師とは、各国で最高権力者とされる者で、戦歴や力量等を國で認められた者だ。自ずと、年も他より上である事が多いが、若くで其の地位へ付く者もいる。
「ほう……老師もまだまだお若いことだ」
最早青年の姿すら視界へ入れず、そう相槌を打つ始末。
「兄者ならば、落とすも容易いのではないか。老体相手だと、体の火照る日もあろうしな」
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