作られた出会い。

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 相方が期待を込めた眼差しで、本題へ入った。  実は此の二人、水の國の武人。兄者と呼ばれた兄弟子に位置する者は要(カナメ)、一方の弟弟子は颯真(フウマ)と其々名を持つ。  他國同様、水の國も木の國の糧と甘んじる状況に不満が募っているのだ。其の為本日は、決戦へ向けての工作員として入国している。表向きは勿論立場を変えているが、そんな奴等は今他國より多く来ているだろう。己等も其の一組に過ぎない。  要は、此の役回りが煩わしいのだろう。しかし、師より命じられ仕方無くと言ったところ。何気に再び当の青年へ目を向けてみた。馴染みなのだろう、店員らしき青年と愉しげに談笑する姿。繊細な面立ち、少々強気に見える瞳が朗らかに見えた。しなやかな体躯は、武人の己からすると貧弱だとも。二人が受けた命は、此の國で最高の権限を持つ者の側を許されたあの青年へ色を仕掛けろとのことだが。 「男か……お前はどうなんだ」  青年を瞳へ映したまま、傍らの颯真へ訊ねてみる。いけぬことは無いが、成るべく面倒な役回りを弟弟子へ押し付けたい兄弟子心。が。 「俺、ああいうの好みじゃない。細いし、頼りないし……そもそも、俺のが可愛くないか」  素直過ぎる意見が返ってきた。下らない同意迄求められたが、此処は素通りする要。 「だが、俺も男はまだ抱いた事がないぞ」  颯真は、そう言い渋る要へ向き直り笑う。そして、甘える様に要の手を取り己の頬へあてて。 「女より簡単さ。繋がる処もひとつ。寧ろ同じ体だ、何が良いかも大体分かる……経験値も必要だろうし、兄者なら俺使っても良いよ」  等と。本気か戯れ言か、何時もの調子をおさめて艶やかに誘う颯真。要は、取られた手を放し颯真の頭上へと置いてやる。幼子の様な扱いに、颯真は要を睨んだ。 「兄者……」 「師父の依頼だ」
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