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「私を、記憶の奥に沈めて忘れてなかったことにして……」
「いや、俺は……」
「どうして私を、愛してくれないのっ!?」
ついに声を上げて泣き出してしまった少女に呆気にとられていると、地面に転がったくまのぬいぐるみがこちらをジッと見つめていた。
暫く真っ黒な粒羅な瞳と見つめ合っていると、脳裏から父の声が聞こえてくる。
“__これ、かすみに”
弾かれるように部屋のクローゼットを開けると、奥深くにしまってあった実家から引っ越しする際に運んだ段ボールを取り出す。
ガムテープを破り中を見ると何度も愛読した小説や漫画と、その下に隠すようにしまわれていたのは……。
__少女が持っているものと同じ形のくまのぬいぐるみと、一枚の写真。
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