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第28話 急げ救出!
轟々と火の粉を撒き散らしながら、数秒で座敷牢の扉は燃え落ちた。パチパチ燻る炎は大蛇の舌みたいにチロチロと天井までも燃やそうとしている。
「えーいっ! 消火ぁぁ〜」
私は自分が消化器になったみたいなイメージで、両手から特急でスペシャル級の吹雪を起こした。
すぐに銀星と緋勇くんが作り出した妖気の炎は消え、天井も壁もつららが出来て凍った。
今は夏で――。しかもオンボロ屋敷内だけど、白い結晶、純白の雪がしんしんと舞い落ちる。
私の作った、妖気で起こした真夏の雪景色。
「綺麗ね、雪華の雪は」
「凪ちゃん!」
うわーんと泣きながら凪ちゃんに抱きつくと、凪ちゃんは優しく私の頭を撫でてくれる。
ちっちゃい頃から面倒を見てくれた大好きな河童のお姉ちゃん。
無事で本当に良かった。
「うわーん、ありがとう。私、ずっと怖かったよ。やっとホッとした。雪華、皆も助けに来てくれてありがとう」
「うんうん」
「凪ちゃん……。はぁ、良かった。僕もホッとした」
「皆、まだホッと出来ないよ。これから脱出しないといけない」
「そういえばひょうたんは……。あと、小河童の亡き骸も、私連れて帰りたいのに」
「雪華……」
「雪華、小河童の亡き骸だったらそこに……。探しているひょうたんって小河童が握ってるそれのこと?」
「――えっ?」
私は凪ちゃんが指差した方向を見る。
すると凪ちゃんが閉じ込められていた座敷牢の片隅に、凪ちゃんの着物が掛けられた小河童がひょうたんを握りしめ力果てていた。
「あの子、一生懸命だったわよ。親分のためにって。頑張り方を間違えちゃったのね。鬼婆に魂を抜かれて。可哀想だった」
「凪ちゃん、着物を掛けてあげたんだね」
「小河童の魂は鬼婆に食べられちゃわなかったんだね。なぜだろう」
「あの子、『親分の所に帰るんだ』って魂になっても必死に逃げ回ってたから」
さっき幽霊になった小河童は、私達に凪ちゃんの場所を教えてくれた。
出来る事なら、小河童を助けてあげたい。……成仏させてあげたい。
私ばかりでなく、皆がシュンとなった。
「そうだ、この屋敷のどこかが火事なんです。煙に巻かれては大変です。皆さん、急ぎましょう。わん太の背中に凪さんは乗って下さいね」
「ありがとう」
「俺が小河童を抱いて行くよ。雪華と銀星は火の手がどこから向かって来るか分からないから、警戒してくれ」
「うん、分かった」
「うん、オッケー。皆、気をつけて急ご〜!」
小走りで廊下を行く。
どこを見渡しても窓一つないなんて、ひどい造りだよね。外がどうなってるか全然分からないじゃない。
早歩きじゃないと。この人数で走れば重さや衝撃でもろい屋敷がガラガラと崩れちゃいそうだよ。
私は行きとは違う気分。凪ちゃんを助け出せたから嬉しかった。小河童のことは切ないけれど……。
あとは鬼婆屋敷から出るだけ。意気揚々と進んで行く。
――と、突然!
ガラガラガラガラァァッ! と物凄い音がした。
ちょっ、ちょっと。
こんなの音が聞こえるなんて、私には嫌な予感しかしなーい。
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