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翌日。 早起きしてお弁当を……と思っていたのに、「昼ごはんなんて向こうで用意すればいいから、たまにはゆっくりすれば」と言う碧惟の言葉と、ついでにあの後なかなか離してくれなかったおかげで寝不足なこともあり。危うく寝過ごしてしまうギリギリの時間まで眠ってしまった。 出かけることを伝えた直緒は案の定大喜びで、落ち着かせるのが大変だった。 朝ご飯の片付けをしながら寺尾さんも一緒に行かないか、と訊ねてみたけれど、 「皆様が帰って来られた時にゆっくりと過ごせるように、お食事やお風呂をご用意してお待ちしております」 と執事らしく深々と頭を下げながら柔らかく返され、そしてそのまま小さな囁き声で、 「……私がいると碧惟様が照れてしまって、新米パパぶりを発揮できないといけませんから」 と寺尾さんらしい悪戯な笑顔で耳打ちされてしまったものだから、僕も思わず顔を見合わせ笑ってしまった。 「いってらっしゃいませ」と見送る寺尾さんに手を振り、3人で家を出る。 「つぎはてらおさんもいっしょにいこうね」 と言う直緒に、寺尾さんは 「はい、お約束いたします」 と優しい笑顔を向けてくれた。 碧惟が運転する車で、大きな遊具のある公園を1つ、また1つ。「あれ?」と思いながらもそのまま通り過ぎて―― 「あ、碧惟……?大きな遊具のある公園って言ったよね……?」 辿り着いたのは、水族館や動物園も併設している、大きな遊園地だった。 動物なんかのイラストが華やかに描かれた入口ゲートの向こう側には、観覧車やジェットコースターのレール、色とりどりの様々な乗り物が垣間見える。ゲートをくぐった向こう側は明らかに別世界で、大きな直緒の目は期待と喜びで更に大きくなり、星空みたいにきらきらと輝いていた。 「何か不満?」 「いえ、ちょっと思ってたのよりグレードが高かったなぁって、びっくりしただけで……」 「大きな遊具もあるし、名前も◯◯パークってついてるから公園だろ」 「それはどうだろう……?」 「文句ある?」 「ありません……」 確かに大きな遊具(?)はたくさんあるし、名前は◯◯パークだけど。 瑞々しく広がる緑の芝生に、滑り台なんかがついた大型遊具……を気楽に想像していた僕は、ちょっと狐に抓まれたような気持ちになった。 でも、もちろん。 きらきらそわそわ、そんな雰囲気が全身から溢れている直緒を前に、文句なんてつけようもない。 碧惟だって絶対わかっていて、この場所に連れてきてくれたのだろう。 車を降り、足を止めて言葉を交わし合う僕たちの手を直緒が取る。 「はる!あおい!なおはやくいきたい!!」 お気に入りのリュックを背負った直緒に急かされるように手を引かれた僕達は、目を合わせ視線だけで小さく笑い合い、追いかけるように足を踏み出した。
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