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「……晴瑠がそんな顔する必要ない。息子を失くしたことは同情に値するけど、後は自業自得だ」 「……うん……」 ぴしゃりと言い切る碧惟に、それ以上何も言うことは出来なかった。 碧惟だって、高野さんにお母さんとの幸せな日々を壊されてしまったのだ。 僕よりもきっと、きっともっとたくさんの悔しさや苦しみを、碧惟は今も押し殺して生きている。 その瞳には、未だ消えない悲しさがいつだって燻っている気がして。 空いた左手を、そっと握った。 「……」 無力な僕に出来ることはきっと少ない。 でもこの手から、碧惟の悲しさや苦しさを、少しでも僕に分けてもらえますように。 そして、その分だけでも、碧惟の心が穏やかになりますように。 碧惟が僕に幸せをくれている分を、僕もちゃんと返していきたい。 何も語らない、澄んだ秋の空みたいな瞳が僕を写す。そっと握り返された手は、切ないくらい優しかった。 「はるとあおい、なかよし」 ふと足元から聞こえる声に視線を向ければ、つい今までうさぎを追いかけていた直緒がにこにこと僕たちを見上げる。 「うん、仲良しだよ」 腰を落とし、直緒に視線の高さを合わせれば、直緒が嬉しそうにふんわりと愛らしい笑顔を見せた。 「それから、直緒と碧惟も仲良しだからね」 「うん。なおもあおいとおててつなぐ」 僕の言葉に、直緒はもっと嬉しそうな笑顔を見せ、碧惟の掌をその小さな掌で握った。 「あおいもうさちゃんなでなでしよ。こわくないよ」 「……。(実はちょっと苦手)」 直緒に手を引かれた碧惟が、密かに眉を潜めながら恐る恐る足元のうさぎに手を伸ばす。 「……何撮ってんの」 「え!? いや、可愛いものが3体も集まってる貴重な瞬間だなぁって思って、つい……」 「……」 「あおい、うさちゃんにごはんあげよ」 「……。……それはハードル高いな……」 思わず溢れる笑顔が、その瞬間の1つ1つをまるで虹色に染め上げていく。 色々なことがあったけれど、僕たちは間違いなく今こうして幸せというものを一緒に紡ぎ出しているのだろう。 それから僕たちは、動物を見たり、魚を眺めたり、乗り物を楽しんだり。過ぎる時間も忘れるくらいにたくさん笑い声を上げ、同じ時間を過ごした。
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