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「笑子、ただいま」目の前に来て本物の卓だとわかった。
「何で?」びっくりしすぎて、でも嬉しくて、また陽炎みたいに景色が揺れてる。
「二日早めに切り上げる事が出来たから。すっげえ大変だったけど、今年も笑子一人でここにいさせるの嫌だったから頑張った」
このクシャ笑い!やっぱり卓だ!
「卓・・・・」もうグシャグシャになった顔を恥ずかしげもなく卓に向けると。両腕でスポっと包んでくれて。
「ごめんな、辛い思いさせて。もう大丈夫だから」
私の居場所に収まって、卓の声を聞いたら、さっき考えてた事がすっ飛んで。
「私が弱いの。こんなんで卓のお嫁さん出来る?」ってちゃんと聞き取れたんだかわからない位しゃくりあげながら聞いてみた。
卓が体を離し、私の両肩をしっかり掴んで顔を覗きこみ・・・・。
「こんな悲しい結末、俺達には関係ないよな?」又クシャっと笑った。
「えっ?」
「二人で初めてみた映画のエンドロールの時に俺が言った事。笑子が聞いてた2年前の答え」
「それを今?」
「ハイこれ・・・・・・だから今」
「えっ?」
「これを今日、この場所で渡したくってさ」
卓の掌に乗っかった白いケースのなかの座布団に指輪が座ってる。
「卓・・・・覚えていてくれてたんだね、あの答え。ありがとう」
私の誕生石のアクアマリンの石が、夕日に照らされて虹色に光っていた。
おわり
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