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一緒に住もうと言ったのは俺からだった。あいつは最初はぜんぜん乗り気じゃなくて、住んでいたところを追い出されてこのままでは路頭に迷ってしまうからと、しぶしぶ俺の家に来たのが半年前。あいつが住み始めてからも家賃と生活費は変わらず俺が払っていたから、負い目を感じていたのだろう。その当時は俺が何か提案すると、しきりに「お前の家なんだから好きにしろ」と借りてきた猫のように従順にしていたのに。言うようになったな、と微笑んでいると、不思議そうな顔で見られていたことに気づく。ごまかすように視線を逸らし、俺はすぐさま話題を変えた。
「で? 何してたの? こんな真っ暗な中で」
その問いかけに、やつは静かに瞼を下ろす。そうして数秒じっとした後、穏やかな口調でぽつりとつぶやいた。
「観察してた。暗闇を」
観察。こいつがよく口にする言葉。観察はものごとを文字に起こすにはとても重要なのだと、いつか話してくれた。どんなものも目で捉えるだけじゃなく、音、匂い、肌に伝わる感触、全神経を研ぎ澄ませて、そのものを注意深く観察することで良い文章が書けるのだと。
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