弾けた、グラスの泡のように

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「ねぇ、覚えてる?」 3年ぶりに会う恋人のエリカに向かって。 少し怒ったように、そして少し悲しそうな顔をして、凛太郎は問いかけた。そんな彼を目の前にしてエリカは、不機嫌そうな顔をする。 「俺がアメリカに行く前。戻ってきたら、結婚しようって言ったの、覚えてる?」 「・・・ああ、覚えてる・・・けど」 その言葉を聞いた凛太郎は眉をしかめて、さらに悲しそうな顔をする。そんな凛太郎の表情を見て、エリカはやっぱり勝手な人だと思っていた。 「覚えてるの?じゃあ、その薬指の指輪と膨らんだお腹は何?」 「何って見て分からない?あなた以外の人と結婚して、第一子を妊娠してるの」 「・・・何で?だって俺たち、別れてないでしょ?」 「自然消滅って言葉知らないの?」 「少なくとも俺は・・・自然消滅なんてしたつもりなかったよ。連絡だって取ってたわけだし」 焦ってそんなことを言う凛太郎を見て、エリカは冷たく笑った。凛太郎からの連絡は、最初は毎日の電話やメール、時々綺麗な風景の絵葉書が届いていたが、最近ではメールの回数は月に1度程度減り、絵葉書は届かなくなっていた。電話ももうしばらくしていなかった。メールの内容はほとんど一方的な近況報告で、エリカは「頑張ってね」などの簡単な返事を返すだけだった。 「連絡取り合ってた?あんなレベルで?月に1度のメールで付き合ってるなんて言える?しかも私がどんどん返事少なくしてるの気付かなかったの?」 「それは・・・」 凛太郎は言葉を詰まらせると、目の前に置いてあるコーラの入ったグラスに視線を落とす。炭酸の泡がシュワシュワと音をたてて上に上がっては、呆気なく消えていく。そして今、自分はこの泡のひとつになったみたいだと思った。夢を追いかけて、上を目指して異国の地で頑張ってきたのに、たどり着いたと思ったら弾けて消えてしまう。
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