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これから一緒に
それから9ヶ月が経った。
創業50周年を迎えるナチュレビューティーの案件も年明けから大々的なイベントや宣伝を打ち初め、春には無事成功に終わり
バタバタ忙しくているうちに5月になった
「なに?どこ行くの?道竹がどこかに俺を連れてくなんて珍しいね」
大きな仕事も終わり、俺は金曜日の夜、秋好を連れて隠れ家のような一軒家のそのフレンチレストランに秋好を連れていった
「・・・・・道竹、ここって」
タクシーを降りて、店の近くまで歩いて行くと
秋好の足が止まった
「俺、行かないよ?」
「秋好」
「どうして貴方があいつと連絡取ってるのかは知らないけど、貴方をあいつに会わせたくない」
「・・・・」
「上條康好がいるんでしょ?この店は父のよく来る店なんです。呼び出されたんでしょ?あいつに」
「俺は・・・違う部屋にいるから」
「?」
「秋好、あの人はお前に話があるんだよ。仕事の話で。」
「・・・もう俺は上條家には・・・・」
「中宮と名乗ってたって、お前はまだ戸籍上、上條秋好だろ?それに家族は離れていたって家族だ。俺はお前がご両親に愛されてるのがわかる」
「愛されてなんか・・・・」
「愛されてるよ。愛されて育ったんだなって、お前といたら分かる。」
「・・・・」
「お前は俺と関係があったあの人は嫌いかもしれないけど、昔からお前を愛してくれていたお父さんとしては嫌いじゃないだろ?お母さんだってお兄さんのことだって、お前は大好きだろ?俺の事くらいでその愛がなくなるくらいの・・・お前の家族愛はそんな薄っぺらくないはずだ」
「・・・でも、俺は・・・家を出た人間だから」
「みんな戻ってきて欲しいんじゃないか?
お前は・・・度々新聞やネットで上條グループ関連の記事を熱心に見てること、俺は知ってるよ?
あの人が昔、『息子2人で私の後を継いでくれたら嬉しい』って、よく言っていた」
「そんなの・・・・・今更・・・・」
「いいから、話してこい。嫌なら嫌だって言ってくればいい。でも逃げるな、ちゃんと向き合え。」
「道竹・・・・・」
「今の仕事が好きで続けたいならそう言えばいい。お前がただ俺と離れたくなくてこの仕事をしてるなら、俺も会社を辞めてお前について行くから。だから、ちゃんと上條様と話してこい」
「・・・・・わかりました」
俺達は手を繋いで店に入り、中には真山さんが待っていた
「秋好様、保田様、お待ちしておりました。秋好様、だんな様が奥の個室でお待ちです」
「わかりました。道竹、行ってくる。待ってて」
「うん、素直に話してこい」
奥の個室に入っていく秋好の背中を見ながら
どうなったとしてもあの男と生きていこうと決めた
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