273人が本棚に入れています
本棚に追加
あの町にゲイはいるんだろうか
少なくとも俺はあの町にいた
でも俺以外のゲイがいるのかはわからない
俺は耐えられなくて高校から田舎を離れたけれど
帰省する度、当たり前のように飛び交う言葉
好きな女の子は?
彼女は?
キスは?
女の子との初体験は?
結婚は?
子供は?
どれも当てはまらない生き方をしたくてあの町を出た
家族といても友達といても寂しかった
本当の自分はこの町では晒せない
だから町を出た
あの町でゲイだと隠して生きている人はいるのだろうか
───────────────────
秋好の出社最後の日
仕事後、会社の近くの居酒屋で送別会が開かれた
「中宮君、お疲れ様でした〜!乾杯!」
「カンパーイ!」
営業部でも一課だけでやるはずだった送別会は、蓋を開けると二課や三課の人も来ていて、何故か秘書課や総務課の女子も来ていた。
宴会場はパンパンで、秋好の周りには女性社員がわかりやすく群がっている。
営業部でも違う課のあまり接点のない男性社員も、その女性社員目当てで来てるってとこだろう
「中宮君がまさか上條グループの代表の上條康好さんの息子さんだなんてねー!どおりで他の人と出来が違うわけよね」
「すいません…騙すつもりは無かったんですけど。。。」
「イケメンで仕事も出来て、その上御曹司だなんて。神様はなんて不公平なんだ!俺との差がすごいんだけど!」
「木村君、比べるだけ悲しくなるからやめよー」
「えっ!ヒドイ!」
俺は少し離れた席で違うグループと飲みながら
わいわい盛り上がっている秋好達の会話に聞き耳を立てていた
「ねー、中宮くんて付き合ってる人いるの?」
秋好の斜め向かいの席に座る女子社員が大きな声で質問した
総務課の子だったかな。歳は多分秋好とおなじくらいの。
前から秋好とすれ違う度、分かりやすくはしゃいでた子
みんな気になっていた事をその子が代弁していたかのように
みんなの視線が集まった
最初のコメントを投稿しよう!