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「あ、いますよ。恋人」
秋好がさらっと言った後
あんなにうるさかった周りが一斉に静まり返った
「えーー?!」
「ショック!」
「そりゃそうだろ」
「え!どんな子?どんな子?」
一瞬だけ沈まった後、一斉に口々に驚きと質問を口にした
「この会社の女子社員?」
秋好の斜め向かいの席に座る女子社員がすっかり落ち込んだ雰囲気で、それでも諦められないという感じだろう、どこの誰かと問い詰めた
「この会社の女子社員ではないです。」
そう言ったあと秋好は俺を見た
みんなは秋好に彼女がいる事実に動揺して盛り上がりそれどころじゃなくて俺たちが見つめ合うことなんて気づいていない。
でも、俺はドキドキしてしまってビールを一気飲みしてしまった
気が気じゃない
バレたらどうする?
俺たちがゲイだと、男同士で愛し合っていることを
「凄く大切な人です。将来結婚しようと思ってます」
俺がバレないかヒヤヒヤしてる間にも
秋好はみんなの前で気にせずに答えていく
「どこが好きか…ですか?
全部です。全部ひっくるめて一生一緒に居たいって思ってます」
バレないように俺は冷静でいなくてはいけないのに
秋好のまっすぐな言葉が嬉しくて
動揺して冷静な自分でいられなくなる
『課長?大丈夫ですか?顔赤いし…さっきからペース早くないですか?』
部下が不思議そうに俺を見る
でも気が聞いた言い訳も出来ず
ただただお酒のペースが上がる
秋好、俺は隠れて生きてきた
本当の気持ちも本当の姿も隠して生きてきた
だからこんな会社の人達の前で本音を言うことなんて
したことはないし、本当の姿を晒すことは無いんだ
でも
ずっと守ってきたものを壊したとしても
今お前に抱きついて好きだと言いたい
俺も一生お前といたい
お前の全部を愛してる
そんな気持ちを伝えたい
そう思ってしまうんだ
『課長?大丈夫ですか?!』
ああ、こんな所で酔いつぶれては秋好に迷惑がかかる
そう思いながら俺は意識を手放した
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