30秒のゆらぎ

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 今の俺は、一流企業に勤める管理職の影となって、ついて回っている。足元から延びる影は、まぎれもなく俺。  退屈な毎日すぎて反吐がでそうだ。  しかし、昨日は、俺の主は、コーヒー豆がなくなったらしく、久しぶりの外出をした。なんと、俺はそこで、有益な情報を聞いた!  コーヒー店で並んでいる時に、隣の影が話かけてきた。  そいつは、70歳は悠に超えているだろう老人の影だった。  「おい、最近、調子はどうだい?」  「俺の方は、バリバリのサラリーマンが今はリモートとかで、一日中、家にひきこもりだよ。今まで海外の世界を眺める事が楽しみだったが、最近はさっぱりさ!」  「そうか、俺の方は、杖をつきはじめたら、杖の影が俺にあたって痛いんだよ。」  「大変だな。あー、前みたいに海外を飛び回る主につきて―よ」  「確かに。そういや、昨日の女の影から聞いたんだが、そいつは、前は、主婦の影で退屈だったそうだが、今は、一流企業のOLについて、毎日、外出して刺激的に過ごしているらしいぜ!」  「えっ!どうやってそんな事ができるんだい?!」  そこで、俺は影の転職話を聞いた。
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