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どうやら、スクランブル交差点で、影と影が重なる瞬間に、相手の影と一度きり、入れ替われるらしい。
それを聞いてからの俺は、いつかスクランブル交差点に主が行かないかと毎日そわそわしている訳だ。
今日も、また、相変わらず、ぼさぼさ頭でパソコンに向かっている主を眺めながら、いつもの1日が流れてゆくかと思いきや、
「あ、プリンターの紙がない」
と、いきなり奴は、出かける準備をし始めた。
ラッキー!プリンターの紙は大手の家電量販店しかない。ということは、例のスクランブル交差点の向こう側に行くはず!
かくして、主は、スニーカーの靴も軽やかにその交差点の赤信号で立ち止まってくれた。
さぁ、俺はこれから、ターゲットを見据えて、この退屈な毎日とはおさらばだ!
ちょうど、反対側に、母親に連れられた5歳くらいの男の子がいる。この子なら、あちこと動きまわるだろうし、何より若い。これからの人生の伴侶としては、申し分ないじゃないか!また若返って新しい人生を楽しめる!
ピッポン、ピッポンという、間抜けな信号の音が響く中、俺は、短距離走の選手のごとく、そいつに標点を定めた。
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