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一瞬でも安心するんじゃなかった。リビングに行けばオレンジのポップな布に包まれた大きい二段弁当がある。
「一段にしてって言ったのに」
むかむかがどこから沸いて、いつ消えるのかは知らない。でもどんなに気持ちがイライラしても、これからはおやすみもおはようもちゃんと言おう。
挨拶ひとつで振り回されるなんてごめんだ。
大きな弁当を鞄に突っ込み、代わりに出したマフラーを首に巻く。
「もう出るぞ」
「わかった!」
ぶっきらぼうなお父さん、ドアを半開きにしたことは許してない。車へ乗り、会話もないけどこれといった悪いこともなく駅前にたどり着く。
「いってらっしゃい」
「……いってきます」
挨拶だけ、ちゃんとする。さっき決めたことはきちんと守れている。
車が去ると、後ろから甲高い声に名前を呼ばれた。
「おっはよー!」
「あ、おはよ」
振り返れば声の主は同じ制服に身を包んだ友人だった。
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