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「覚えてる?」
そう語り掛けてきたのは、まだあどけなさが残る少女だ。
しかし、その姿は夜闇の中で輝き、背中には白鳥のような翼と、頭には天使の輪っかがある。
僕はだるく思いながら生返事を返すと、彼女は眉根を吊り上げて言った。
「神の敵と戦う約束でしょう。こんなところでぼーっとしてる場合なの?」
「ちょっと休憩しているだけだよ」
少し間を開けて、僕は尋ねた。
「で、僕らが戦わなきゃいけない悪魔とは、どんな相手なんだい?」
その言葉を聞いた天使の少女は、よくぞ聞いてくれましたと言わんばかりに微笑んだ。
「今回の敵は嫉妬する者たち」
「ああ~ 人間より、自分たち天使の方が神に愛されるべきだ…そう考えた天使たちのことかい?」
そう尋ねると、天使の少女は頷いた。
「そうよ。よく勉強してるわね。嫉妬する者たちは人間に強い敵がい心を持っているの。だから、情けない戦いをしたり、逃げたりしたら神の考えが間違っていることになるわ」
「神の剣として、雄々しく戦いなさい…か…」
そこまで言って天使の少女を見ると、彼女は微笑んだ。
「まあ、普通の天使なら今のように言うんだろうけど、怖くなったら逃げてもいいよ」
「なんで?」
逃げるという言葉を聞き、僕が不機嫌に思いながら尋ねると、天使は言った。
「戦士は、失敗から様々なことを学んで強くなるもの」
その言葉を聞いて僕は苦笑した。
「さすがは堕天使様、ただの天使とは人生経験が段違いだね」
「ずいぶんと気の利いた皮肉ね」
天使は神のやり方に疑念を抱いたとき、堕天するという。
しかし、堕ちる理由は天使によって全く違うため、このように美しい外見を維持したまま神の元を離れる者もいるようだ。
僕はふと疑問に思ったので、彼女に尋ねることにした。
「ところで、お前…神様のことを主と呼ぶ予定はあるのか?」
その質問に堕天使は少し悩んだようだ。
「私は自由に生きたいと思う気持ちが強いからね。ただ、そういう私のような天使を神が必要としているのだとしたら…或いはって感じかしら?」
「お前は、神が人間を作ったことに関しては賛成なんだもんな」
「ええ、私から見て不満の多い神だけど、これだけは評価できると思うんだ。だって人間って、神のみっともない所を凝縮させたような存在なんだもん」
僕らは笑いあっていたが、月明かりが差し込むと笑みを消した。黒い翼の一団。嫉妬する者たちが姿を見せたからだ。
「今日も頼んだよ…スターダストブーメラン!」
「そっちこそ、死なないという約束…しっかり覚えてろよ!」
僕はそう叫びながら敵を睨みつけた。相手は5人。厳しい戦いになるだろう。
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