21人が本棚に入れています
本棚に追加
四日目は彼女からのリクエストで、午前二時直前に一旦玄関の外へ出て、二時ジャストに部屋へと入った。
「お帰りなさい。ご飯にする? お風呂にする? それともあ・た・し♪」
玄関扉のすぐ前で、彼女は可愛らしくポーズをとっている。勿論血だらけで。
それがやりたくて成仏できなかったのかと思うと、どっと疲れが押し寄せてきて言葉も出ない。
「何よ。少しくらいノッてくれてもいいじゃない」
「じゃあ風呂」
「え?」
「一緒にお風呂入ろう!」
彼女の必死な「冗談! 冗談だから!」という言葉を無視し、やけくそとばかりに風呂へ向かいながら服を脱ぎだす。彼女や式神らの呆れた視線を感じてはいたが、こちとら好きな女が部屋に来てくれない童貞だ。俺にあんなことを言うなんて、童貞の本気を見せてやる!
でも一応彼女の具合が悪くなるといけないので、風呂場の電気はつけないまま、素っ裸で風呂場へ入った。
空の浴槽に入り後ろを振り返ると、風呂場までついてきた彼女は当然服を着たままだった。そして血だらけだ。俺と目が合った瞬間、盛大に笑われる。
「これじゃ、深夜に一人で風呂入ってるだけじゃん……」
幽霊相手に一体何を期待したのか。急に自分だけ素っ裸なのが情けなくなり、しゃがみ込んで頭からシャワーを浴びた。すると彼女はハンドタオルを石鹸で泡立てて、俺の丸くなったしょうもない背中を優しく擦ってくれるのだった。
*
五日目は明香里と映画を見る予定になっていた。テレビは無いのでスマホの小さい画面で鑑賞することになる。事前に彼女が見たいと言っていた恋愛映画をレンタルサイトで選んでおこうと、夕方にスマホを弄っていたら茜から着信があった。
「部屋の様子はどうかって、店長が訊けって」
あくまでも自発的に電話をしたのではないと、俺のテンションが上がらないよう釘を刺してくる。ご期待通りのローテンションで「まぁ……ぼちぼち?」と答えると、さすがに罪悪感が芽生えたのか、
「今夜、夕飯持って行こうか?」
と訊かれた。
(え? どういうこと? 茜が俺の部屋に泊まるってこと!?)
一瞬、床から体が浮きそうになるが……
「いや、いいよ」
「何それ!? せっかく私が行ってあげようとしてるのに!」
「だって……出るし」
「出るって何が……あ、そう…なんだ……」
本当のことしか言っていないけれど、若干後ろめたい気がするのは一体何故なのだろうか。
最初のコメントを投稿しよう!