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「持つ」
「大丈夫ですよ。まず八百屋さんに寄りますから、良いスイカがあったら買いましょうね。よく冷やせばきっと美味しい」
商店街は朝から賑わっていた。八百屋の人の多さと声の大きさ。店主は都を見つけて微笑む。
「やあ、都ちゃん。しっかりした良いキャベツが入ってるよ。煮ても焼いても美味しいからね。おや、そちらにいるのはお友達かい?」
「ご主人様ですよ、僕に居場所をくれました」
「へえ! 若いのにねえ、仲良しで何より。兄ちゃん、都ちゃんを大切にしてやっておくれよ」
「十分、良くしてくれていますー」
主人、その呼び方は夫婦にもとらえられる。それ以前に晴翔は都を雇った覚えもないが……好きだから連れて来た、それだけだ。
「都、その……」
「ああ、今日はスイカありますか? 小さくても良いので甘いものをください」
「はは、きっと君が買いに来てくれると思って裏に隠していたんだ。都ちゃんだけだからね、特別だ!」
「わあい、一つください。聞きました? 晴翔さん、特別ですって!」
「えっ、ああ……そうか」
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