夏の朝

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 新鮮な食材を手に入れられて都は上機嫌だった。まるでデートじゃないか。これなら荷物持ちも悪くない、いろんな表情の都を見ることが出来る。笑顔で買い物をする都の横顔に晴翔は少し心が動いた。  活気づいた商店街は笑顔で溢れる。実家のある静かな村でいかに今まで狭い世界で育っていたか、学生と言う期間限定とは言えども新しい世界を知れたことと都が笑顔でいてくれること、それは初めて感じた晴翔にとってかけがえのない時間であった。  *** 「あ、晴翔じゃん」 「どうも」  昼食を終えて晴翔は学校の図書館にいた。徒歩十分とは言えこの炎天下の中ではなかなか辛いものがある。課題の資料の論文を探して、図書館は人数は少なかった。  市川純は一浪して深東京医専に入学した。晴翔の一つ年上でテスト間際にノートをよく借りにくる。そんな彼も課題のためにやって来たのか、分厚い資料を何冊も持っていた。 「勉強、するんだな市川」 「なんだその顔! いや、するだろ。授業のノートはだるいからお前の丸写しだけど、課題はさすがに写せない。それにこれでも俺、地元の期待の星なんだぜえ」 「地元どこだっけ?」
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