夏の朝

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「すみません、他に用意出来なくて……本当は今日色々と作ろうと思っていたんですけど」 「いや、米も美味いし全然ありだよ。俺、最近ろくなもの食ってなかったからなあ……全くお前は幸せものだな、晴翔!」 「……」 「なんだよ、お前二人きりを邪魔されて拗ねてるのか?」 「黙って食え」 「はっ可愛くないやつー!」  横になったままの都は晴翔の表情に苦笑する。あんなに動揺した彼を見たのは初めてだったかもしれない。冷蔵庫に用意してあったものと炊き上がった米。それだけでも市川は絶賛しておかわりを繰り返す。晴翔にとっての当たり前の食事は、市川にとってはごちそうだった。深東京都市のほとんどの学生は食事係までは用意出来ない。とは言っても晴翔にとって都は食事係という名目の同棲相手だったが。今日は少し動揺して、ショックが癒えない晴翔はいつも以上に口数が少なかった。  夕飯を満腹になるまで食べて、スイカまで食べた市川は夜も更けた頃に下宿先のアパートに帰って行った。静寂の中、虫の声だけが響いている。 「晴翔さん、お風呂沸かしますね。汗もかいて暑いでしょう」 「いや、それは俺がやる」 「晴翔さん?」
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