夏の朝

13/13
前へ
/71ページ
次へ
 表情の固かった晴翔は都を見つめて、崩れる。乞うように差し出したたくましい腕は都をぎゅっと抱きしめた。恐ろしいことから逃れるよう、強く強く抱きしめて離さない。 「は、晴翔さん、僕汗くさいですから……」 「……俺がどれだけ心配したかわかっているのか?」 「晴翔さん」 「俺はお前がいないと生きて行けない、大袈裟じゃない本当のことだぞ」 「すみません、大丈夫ですからもうそんなに気にしないでください」 「気にしないでどうしろって言うんだ!」  冷たい頬を晴翔はそっと包み込む、溢れ出す感情は晴翔の赤く充血した瞳を見ればわかる。愛おしさは年を経るごとに強まって、失うことを考えるとその心が不安定になるのだ。そんな晴翔に都の心は戸惑って……。
/71ページ

最初のコメントを投稿しよう!

38人が本棚に入れています
本棚に追加