Space Age② フィリ・シャルリの希み

1/1

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
 小学校に入ってすぐに、国のいっせいけんさを受けた。僕も、同い年のクラスのみんなも。  “宇宙移住”計画のために、『てきせいいでんし』がある人を探すんだって。  この星は人が多くなりすぎで、だから希望にみちた新しい星に行ける人をさがすのです、『てきせいいでんし』のある人は、この宇宙の旅や生活に向いている人のことですよ、と先生は言った。それで僕、自分にそれがあることをすごくすごく、すっごく祈った。宇宙に、絶対に行きたかったから。  結果は―『てきせいいでんし』あり! 思わず、やったあ!! って叫んだら、みんなにちょっと変な顔された。家族と離れて宇宙に行くのが、うれしいのかよ? って。うれしいよ、もちろん。そして気がついた。あんまりうれしがっていない子が、けっこういる。  どうして??         ***  そして4年が過ぎて、10歳になったとき。ついに、宇宙に旅立つ番が回ってきた。  その間に、いくつもの宇宙船が大勢の人に見守られ船体を光らせながら旅立ち、その都度、船内を紹介する映像がニュースで繰り返し流された。近未来的でイカス共用部、設備が充実した個室、おしゃれな食堂-。全部全部、僕の憧れ。ついに僕も乗るんだ、あんな暮らしをするんだ。ピカピカの宇宙船に乗って、旅立つんだ。地上の皆の、羨望の視線を集めながら。  だけど、実際に乗り込んでみると、映像で見たのとはちょっと、いや、かなり? 様子が違っていた。映像と違って、この船は、どこかくすんだ感じ。…まあしかたないか。いくつも船が必要だから、すべてピカピカとはいかないのかも。この星の資源はコカツしつつあるからって、父さんが言った(コカツって、なに?)。  誰も見送りに来なかった。父さんは仕事で忙しいし、“母さん”は幼い弟妹の世話で手一杯。まあ、別に。しかたない。それに―。 『フィリ、私の坊や、愛してる。寂しいときはお空を見てね。お母さん、お星さまになってあなたをずっと見てるから』  これは、僕の実のお母さんが、病気で亡くなるまでの数か月間、繰り返し僕に言った言葉。そのころ、一流の研究者として超、超! 忙しくてずっと家にいなかったお母さんがずっとそばにいてくれるようになって、僕はとてもとても嬉しかったんだ。けどそれは病気になったせいと、後になって気が付いたんだけど。  まあ、とにかく、最後にこの言葉を聞いたときにまだ3歳だった僕は、この言葉を信じた。お母さんがいなくなってから、いつも夜空を見上げていた。宇宙を行く船が羨ましかったのは、あれに乗ればお母さんの元に行けると思っていたから。  もちろん、今では知っている。それが、お母さんの、僕への優しい嘘だったと。だけど。この地上にいなくなったお母さんは、じゃあ、どこに行ったの? 宇宙にいないなんて、誰が断言できる? だから、僕は行くんだ。船に乗って、宇宙を。         ***  船に乗り込んだ。一緒に乗り込んだのは、ほとんどが子ども。だから、世話係のアンドロイドはお母さんのようなタイプのものが多かった。その中の1人(1体?)はとてもとても優しく、僕に微笑んだ。まるで、そう、まるで、3歳のときに別れたお母さんのように。 To be Continued TO Space Age③
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加