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宇宙に送られる子どもたちが、少しでも寂しくないように、快適なように―。
あの“宇宙移住”の決議以来、私は没頭した。子どもたちを世話する“愛情溢れる” 母親のようなアンドロイドの開発に。なぜなら、気づいていたから。あの計画が、上級民どもが決めた人減らし策であると。…口には、決して出せないけれど。
輝かしい、未来ある計画? とんでもない! 宇宙という光の無い世界へ、希望の無い旅へ、そんな2つの暗闇の中で“余計な”下級民の子どもたちを過ごさせ、やがては絶望的な運命を辿らせる策略に他ならない。私には、それを止める力はない。だから、せめて―。
***
そうした研究開発漬けの生活の中で夫の心が自分から離れ、他の女性へと向いていったことにも気づいていた。けれど、それを止めたり咎めたりするつもりはなかった。だって、研究に没頭できてむしろ好都合、とすら思っていたから。そんな私の努力は、多大な称賛を得る結果を生んだけれど。
私は失った。夫の愛と、そして自身の健康を。私の人生は、光を失った。しかたがない。だけど、あの子、フィリはどうしよう? まだたった2歳の、私の息子を?
私がいなくなれば夫はあの女と一緒になるだろう。そうしたら、私に似たあの子は、邪魔になるかもしれない。もしかしたら、あの船に乗せられるかもしれない。遠い遠い、片道の旅をするあの船に。
だから、私は、あの数多の船に乗せるアンドロイドたちにこっそり自分の記憶を移植した。そして、宇宙を行く、あの暗闇の中での旅がつらいことと思わぬよう、言葉の魔法をかけることにした。私はあの子に囁いた。繰り返し、繰り返し。
***
『フィリ、私の坊や、愛してる。寂しいときはお空を見てね。お母さん、お星さまになってあなたをずっと見てるから』
To be Continued 、、、たぶん
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