1等は言うことを聞かない

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司は、この商店街の花屋の息子だ。 今は大学3年生で授業も少なくなってきていて、就職活動に力を入れている。 就活の合間に父親の花屋を手伝っていて、今日は自分の部屋でエントリーシートを書いている最中に、父親に頼まれた。 「有田先生から、ワクワク抽選会のくじ作りを頼まれたんだ。今店が忙しくてな、悪いがやってもらっていいか?」 そんなに難しい仕事でもないし、エントリーシートが煮詰まっていたので、気分転換にやってみることにした。 それに、有田先生は司が幼い頃から可愛がってくれたし、日頃から司の父親は有田先生に腰のケアをしてもらっている。 礼のつもりで引き受けることにしたのだった。 徒歩10分ほどで、有田整骨院に辿り着いた。 「いらっしゃいませ···って、司くん!久しぶりだなあ!」 いきなり受付で有田先生が大きな声で挨拶をした。 「先生、お久しぶりです」 司の姿を見て、有田は顔を輝かせた。 もう70歳にもなるのに、若々しい。 頭は丸坊主で、体格がいい。シャキシャキと動く。今でも現役でベテランなのも頷ける。 「先生なんてよそよそしいなあ!昔みたいにおじさんって呼んでもいいんだぞ〜」 「ははは、それは子供のときの話ですし。あ、父に頼まれたんですけど、くじ作りましたよ。どうぞ」 司はビニール袋に入れていた大量のくじを有田先生に見せた。
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