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「まぁ、お金の為でしょうね。今年は、不作だったみたいだし」
そんなことをぼやきながら、私は「ふわぁ」と大きく欠伸をした。
今年、アシュフィールド侯爵領は全体的に不作だった。それはつまり、あまりお金が稼げないということを意味する。元より、エリカと継母の浪費の為貧乏だった我が家。それに不作が重なれば……お金が無くなるのも時間の問題。その為、お金を工面するすべとして父は私をギルバート様に差し出した。上手く手籠めにしてこれば、援助をしてくれると画策したのだろう。……私に、手籠めにできる自信はないし、するつもりもないのだけれど。
私の願望は、リスター辺境伯爵家でメイドとして働くことである。ギルバート様も、妻は嫌でもメイドならば受け入れてくださるかもしれない。そう言う考えが、根本にあった。まぁ、とにかく。私はあの家から離れたかった。もちろん、元婚約者のイライジャ・マッケラン様からも。だって、彼はエリカを選んだから。私のことを、捨てたから。
「まぁ、追い出されないぐらいに頑張ろうかな」
屋敷に残してきた使用人たちのことは心配だけれど、そこら辺はもう祈るしかない。私に出来ることは、ないから。……せめて、恩返しぐらいはしたかったけれど。私がまともに育ったのは、使用人たちのおかげだったし。
(……成り上がるなんて、考えていないわ。平凡に、平穏に人生が終わればいいの)
心の中でそうつぶやいて、私は少し眠ることにした。ゆっくりと目を瞑れば、すぐに睡魔が襲ってきて――眠ることが、出来た。
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