第11話 双子侍女のお屋敷案内

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「シェリル様は……旦那様のことを、どう思われていますか?」  屋敷を案内してもらっていると、ふとクレアがそんなことを言ってくる。……ギルバート様の、こと。あえて言うのならば、私もあのお方のことを「年の離れた兄」だと思うことにしている……ということぐらい、だろうか。あと、噂ほど怖いお方ではないということ。結構、優しい人だということ。 「そうね。噂ほど怖いお方ではないと思うわ。むしろ、お優しい人だと思っているの」  私が歩きながらそう言うと、クレアとマリンは一旦顔を見合わせる。……何か、おかしなことを言ったかしら? そう思って私が内心少し不安に陥っていると、クレアとマリンは「そうですよね!」と笑みを浮かべて言葉を返してくれた。……間違ったことを言ったわけでは、ないらしい。 「私たち……その、旦那様に拾われて、ここで働かせてもらっているのです。なので……その、旦那様には恩を返しても返しきれず……」 「私たちは、精一杯お仕えすると決めているのです! あと、旦那様にいずれお似合いの奥様が出来ると良いなぁとも思っております!」  マリン、クレアの順で二人はそう言った。……ギルバート様には、そう言う一面もあったのね。だけど、それよりも……あの人に、お似合いの奥様など出来るのだろうか? 「そうなのね。だけど……その、ギルバート様にお似合いの奥様って……出来るもの、かしら?」 「そうですよねぇ。旦那様、大層女性嫌いを拗らせてしまっていますから……」  私がぼやいた言葉に、クレアは同意し、マリンはうんうんと首を縦に振っている。でも、ギルバート様はお優しい。だったら、いずれは――。 「――でも、いずれはギルバート様の良さを分かってくださる女性が、現れると思うわ。……それを待つしか、今は出来ないのではないかしら」  優しい人には、それ相応にいいことがある。私は、そう信じていた。
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