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「ぎ、ギルバート様……?」
「今は、俺に話を合わせてくれ。面倒なことにしたくない」
一人戸惑う私がギルバート様に視線を向ければ、ギルバート様は私にそう耳打ちされてきた。……そう言うこと、なのね。やっぱり、婚約者として紹介しているのはそう言う打算的な意味合いが強いのか。でも、それはそれで当然だと思う私もいた。
「伯爵様。こちらが、今の畑の現状でして……」
カリーさんに案内されて、私とギルバート様は彼の畑の元に向かう。その畑には、少ししおれたような野菜たちがあった。……雨不足、かしら? 私がリスター家に来てから、あまり雨は降っていないし……。それとも、土の栄養不足とか?
「……そうですか。少し、お邪魔をしても?」
「はい、どうぞ」
ギルバート様はそうおっしゃると、私に「ここで待っていてくれ」とだけ声をかけられて、畑に足を踏み入れていかれる。……私も入ってみたいけれど、服が汚れるのは嫌だから素直にここで待機しておこう。そう思って、私は畑の手前にしゃがみこみ、手を伸ばして土に触れてみた。……魔力が、なんだか少なくないかしら?
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