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第2章 可愛い鹿乃子さん
私の朝は早い。
家に入れるほど稼ぎはないのでせめて、朝食を作る。
「おはよう」
「おはよー、もう朝ごはんできるよー」
一番に起きてきた祖父と一緒に朝食を食べる。
うちはみんな起きる時間がバラバラなので、それぞれの時間に取っていた。
「やっぱり味噌汁の具は麩だよな」
入っている麩を箸で摘まみ、祖父がにやりと笑う。
特産なのもあるが、祖父はとにかくお麩が好きだ。
このあいだの旅行、朝の味噌汁の具が豆腐だったと不満げだった。
「あれから三橋のボンから、なんか連絡はあるのか」
「あー、うん。
ちょいちょい」
なんとなく、言葉を濁して誤魔化す。
祖父とのこの話題は、非常にデリケートなのだ。
あの翌日、帰ってきた祖父は私が若旦那から求婚されたのを知った途端、――吠えた。
『俺の目のくれぇうちは、鹿乃子をそんじょそこらの馬の骨なんかに渡すかー!』
そのままガチで東京まで乗り込みかねなかったが、勢いよく立ち上がったせいで腰がぐきっといった。
おかげでまだ馬の骨とやらには会っていない。
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