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第4章 これは同情で愛情ではない
私の朝は三橋さんの声ではじまる。
『可愛い鹿乃子さん、おはようございます。
お目覚めの時間ですよ』
「……おはようございます」
もそりと起き上がり、あくびをしながら大きく伸びをした。
キングサイズのベッドは、小柄な私がひとりで寝るには広すぎる。
『今日は一日、おうちにいる予定ですか』
歯磨き中も三橋さんが話しかけてきた。
新居にはすべての部屋どころか風呂や洗面所にまでスマートスピーカーが置いてある。
いや、家だけじゃない。
実家の工房にも設置された。
『これでいつでもどこでも、可愛い鹿乃子さんとお話しできます』
……なーんて言いながら、大量に届いたスマートスピーカーの梱包を解いている三橋さんを見たときはどうしようかと思ったけど。
『可愛い鹿乃子さんの今日の朝ごはんはトーストとヨーグルトですか?
私と同じですね』
目の前に置かれているスピーカーのディスプレイには、三橋さんと共に朝食であろうトーストとマグカップが見えた。
ダイニングとリビング、工房に置いてあるのはディスプレイ付きのビデオ通話のできるタイプだ。
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