第4章 これは同情で愛情ではない

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寝室にもそのタイプを置きたいと言われ、さすがに拒否した。 『可愛い鹿乃子さんの寝顔を眺めながら寝たいんです』 などといくら懇願されたところで、着替えたりもするところは却下だ。 「今日は夜、こちらへ来るんですよね? 晩ごはんはどうしますか」 『そうですね、可愛い鹿乃子さんの作ったごはんは食べたいですが、遅くなりそうなのでいいです。 新幹線の中でなにか食べますよ』 はぁっ、と物憂げに三橋さんがため息を落とした。 「わかりました。 じゃあなにか、軽いものを準備しておきます」 この場合の三橋さんの食事は、よくておにぎりかサンドイッチ、悪いとカロリーゼリー飲料で済ませたりする。 あれは絶対的に、身体によくない。 でも彼は、自分自身のことに無頓着……というよりも、関心がないのだ。 ここひと月ほどの付き合いでわかってきた。 『え、いいですよ、そんな。 迎えもいいですからね、タクシーで帰りますから』 はぁーっ、と今度は私の口からため息が落ちていく。 三橋さんと同じように、私も彼を甘やかせたいのだ。 そろそろそれに、気づいてほしい。
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